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Friday, July 2, 2021

児童5人死傷事故 通学路の安全な環境づくり急げ - 愛媛新聞

社説

児童5人死傷事故 通学路の安全な環境づくり急げ

2021年7月3日(土)(愛媛新聞)

 飲酒運転でまた子どもが犠牲となる痛ましい事故が起きた。

 千葉県八街市の市道で、歩いて下校中の児童の列にトラックが突っ込み、5人が死傷した。逮捕された運転手から基準値を超えるアルコールが検出され、資材を運んで帰社途中に飲んだと供述しているという。

 言うまでもなく重大事故につながる飲酒運転は許されない。事故の詳細な原因はもちろん、運転手の勤務先で必要な安全対策が取られていたかどうか追及する必要がある。

 これまで重大交通事故が起きるたびに法改正による厳罰化が繰り返されてきた。だが事故防止は個人のモラルに頼る面も大きく、悲劇はなくなりそうにない。行政や地域が通学路の事故の危険性を徹底検証し、歩道整備や速度規制など安全な環境づくりを急がなければならない。

 重大事故を巡っては、1999年、東京の飲酒運転事故で女児2人が死亡したのを機に厳罰化の声が高まった。刑法に危険運転致死傷罪が新設され、さらに最高刑が懲役15年から懲役20年に引き上げられた。しかし立証のハードルが高く、新たに自動車運転処罰法が施行。昨年の道交法改正で、あおり運転が厳罰化されたのは記憶に新しい。

 警察庁によると、飲酒運転による死亡事故は2006年の612件から20年には159件にまで減り、法的措置の一定の効果は認められる。だが近年は下げ止まり傾向にある。最後は個々の安全意識に頼らざるを得ない。

 周囲が飲酒運転をさせない対策を取るのも重要だ。貨物自動車運送事業法の許可を得た事業者は、アルコール検知器で酒気帯びの有無を確認するといった安全対策を取らねばならない。もっとも今回のトラックは自家用の「白ナンバー」で、義務付けの対象ではなかったようだ。ただ白ナンバーでも、運行台数によって道交法に基づく同様の安全対策が求められる。実際の運行態勢がどうだったか、捜査の行方を注視したい。

 事故現場の道路は幅6・9メートルで見通しがいい一方、歩道やガードレールがなかった。大型トラックが通る上、近隣の大型商業施設への抜け道にもなっており、市は過去4回、PTAからガードレール設置などの要望を受けていた。しかし用地買収などで時間や費用がかかるとして見送っており、今後も安全環境の整備を進める上で優先度の判断基準の在り方が問われよう。

 通学路については、警察庁や文部科学省など関係省庁が連携し、点検や道路整備を進めている。警察庁によると、通学路を含む生活道路の最高速度を時速30キロに制限する「ゾーン30」は20年度末で全国4031カ所を数えるまでになった。

 自動車の速度規制などで歩行者の安全環境づくりを進めるのに、ドライバーが果たす役割は重い。尊い命を守ることを何よりも優先する、との意識を社会全体で共有する必要がある。

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