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Tuesday, June 28, 2022

ACアダプターの世界の省エネ基準をクリア、日清紡マイクロが電源制御IC - ITpro

 日清紡マイクロデバイスは、スイッチング電源(AC-DCコンバーター)に向けた制御ICの新製品(図1)を発売した ニュースリリース 。最大出力電力が50W程度までのスイッチング電源に使える。応用先は、ACアダプターのほか、産業機器や通信機器などに内蔵するスイッチング電源モジュールである。

図1 ACアダプターの省エネ基準をクリアできるスイッチング電源制御IC

図1 ACアダプターの省エネ基準をクリアできるスイッチング電源制御IC

(出所:日清紡マイクロデバイス)

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 新製品の特徴は、米国のエネルギー省(DoE)や欧州委員会(EU)、国際電気通信連合(ITU-T)などが定めた省エネルギー(省エネ)基準をクリアできること(図2)。「これらの省エネ基準の中でも、最も厳しいEUの行動規範(CoC:Code of Conduct)規格を満足できる」(同社)。CoC規格では例えば、5W出力と50W出力のスイッチング電源に対して待機電力と平均効率(25%負荷と50%負荷、75%負荷、フル負荷の4点における平均効率)の基準値を定めている。具体的には、50W出力のスイッチング電源であれば、待機電力は0.150W以下、平均効率は88.0%以上である。発売した新製品を使えば、このCoC規定をクリアできる。例えば、48W出力のスイッチング電源に新製品を使った場合(50W出力の規定を適用)、AC240V入力時に待機電力は0.11Wに抑えられ、平均効率は90.47%が得られる。

図2 省エネ基準をクリアできる

図2 省エネ基準をクリアできる

図左上は、米国エネルギー省(DoE)の省エネ基準と、欧州委員会(EU)の省エネ基準(CoC)で定められた具体的な基準値である。この2つの基準値を比べると、待機電力(Standby Power)と平均効率(Four point average)のどちらもCoCの方が厳しい。そこで、今回の新製品を使って6W電源と48W電源を試作し、CoCの基準値と比較した。例えば、48W電源の場合(50W電源の基準値を適用)の比較結果が図左下である。AC240V入力のとき、新製品を使った48W電源の待機電力は0.11Wで基準値の0.150Wを下回っており、平均効率は90.47%で基準値の88.0%を上回っている。このため基準値をクリアである。なお、平均効率とは、25%負荷、50%負荷、75%負荷、フル負荷という4つの負荷点における変更効率の平均値である(出所:日清紡マイクロデバイス)

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 省エネ基準をクリアできた理由は、RCC(Ringing Choke Converter)方式と疑似共振方式を組み合わせた制御方式(疑似共振RCC方式)を採用したことにある。RCC方式は、制御ICの消費電力を抑えられるメリットがある。なぜならば、トランスに巻いた帰還巻線でスイッチング周波数を決める自励タイプであり、PWM制御回路を内蔵する自励タイプと異なりクロック発振回路を集積する必要がないためである。一方の疑似共振方式は、コンデンサーとインダクターによる共振波形を使ってスイッチングする方式であり、電力損失とノイズを抑えられるというメリットがある。従って、RCC方式と疑似共振方式を組み合わせれば、高効率で低ノイズのスイッチング電源を構成できる。

 ただしRCC方式は、これまで大きく2つの課題を抱えていた。1つは、ディスクリート部品を組み合わせて制御回路を構成する必要があったため、設計難易度が高かったことである。この課題については今回、専用の制御ICである新製品を用意することで解決した(図3)。

図3 1チップ化することで設計難易度を大幅低減

図3 1チップ化することで設計難易度を大幅低減

これまで疑似共振RCC方式のフライバッククコンバーターを作成する場合は、トランジスタや抵抗、コンデンサー、フォトカプラーなどのディスクリート部品を組み合わせて制御回路を構成する必要があった。「各ディスクリート部品の特性ばらつきを考慮して、スイッチングのタイミングなどを最適化する必要があったため、設計が非常に難しかった」(日清紡マイクロデバイス)。新製品では、こうしたディスクリート部品による制御回路を1チップ化した。このため設計難易度が大幅に低くなった(出所:日清紡マイクロデバイス)

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 もう1つは、自励タイプであるため、負荷電流の変化でスイッチング周波数が大きく変動してしまうことである。この結果、発生するノイズの周波数も大きく変動し、ノイズ対策が難しくなっていた。この課題については、「負荷電流に応じてオン時間を制御する方式を導入することでスイッチング周波数の変動幅を狭くすると同時に、疑似共振方式と組み合わせてノイズ発生量を抑えることで解決した」(同社)。

 新製品の型番は「NJW4790」。使用可能な電源回路は、絶縁型フライバックコンバーターである。新製品にスイッチング素子(パワーMOSFET)やトランスなどを外付けして構成する。過電流保護機能や出力の過電圧検出機能、サーマルシャットダウン機能を備える。電源電圧範囲は+7.2〜35V。パッケージは10端子VSP(10端子MSOP)。動作温度範囲は−40〜+125℃である。量産は2022年11月に始める予定。サンプル価格は1000個購入時に1個当たり220円(税込み)である。

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