ご飯とおみそ汁はこちらで出します。おかずはそれぞれが1品、持ち寄りましょう-。知人が催すそんな食事会に何度か参加した。コロナ禍もあって開かれなくなったが、きんぴらごぼうや煮物、卵焼きなど各家庭の味をいただく、楽しく安らかな時間だった▼こうした持ち寄り形式の食事会を、欧米では鍋に幸運を運ぶとの意味を込めて「ポットラックパーティー」と言うそうだ。日本の田舎では、日常的に開かれていたパーティーだろう。漬物や煮物、駄菓子が並んだ縁側や茶の間で、近所の人とおしゃべりをする祖母の姿が懐かしい▼田舎の料理がおいしいのは、家庭の味がお裾分けや茶請けで振る舞われるうちに、工夫が重なってできる郷土の味だからではないか。それを部外者でも気軽に味わえた一つが、道の駅や産直市に並ぶ漬物だった▼その自家製漬物が姿を消しつつある。2018年6月の食品衛生法改正で製造が許可制になり、住居と区画した作業場を整備し、水道は直接手が触れないようレバー式にするほか排水環境も整えなければならなくなった。経過措置は今年5月末までで、手を引く個人の生産者が多いという▼安全な食の提供に衛生管理は大事だが、行き過ぎではと思う。今後「不衛生だから」と、すし職人もポリ手袋を義務付けられやしないか。画一的な味と過剰な除菌に慣らされていくようでどうにかしてあらがいたくなる。(衣)
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