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Sunday, April 7, 2024

地域活性化や安全な暮らし デジタル技術が導く輝く未来|日経BizGate - 日本経済新聞

アフターコロナを迎え、経済活動が正常化に向かいインバウンド需要も回復するなど明るい兆しが見え始めている。しかし、一方では少子高齢化に伴う人口減少や地域経済の衰退、人手不足など、日本が抱える課題は依然深刻だ。そうした中、3月に行われた「FIN/SUM2024(フィンサム2024)」では、全国銀行協会会長でみずほ銀行取締役頭取の加藤勝彦氏が、「デジタル技術で明るい未来を切り拓く」と題し、生成AI(人工知能)なども積極的に活用する銀行界の取り組みを紹介した。

生成AIで銀行界も業務効率化を推進

全銀協は2023年度、「社会・経済の持続的な発展を支え、明るい未来に繋げる1年」を活動方針に掲げてまいりました。今回は、その中から「デジタル技術で明るい未来を切り拓く」というテーマで話をさせていただきます。

まずは、生成AIの活用状況についてご紹介します。昨年、Chat(チャット)GPTの普及と同時に銀行界でも生成AIの試験導入・実証実験が進み、約3割の会員行が社内業務に活かす取り組みを進めています。具体的には、文章の要約や翻訳、プログラミングなどに加え、社内手続きの照会対応における精度向上などが進展しています。今後は、これらの効率化で生まれた時間を使い、お客様との接点やコミュニケーションを増やしていく必要があり、クリエイティビティーや課題設定力といった人間固有の能力が差別化要素になると考えています。

デジタル技術で地域の活性化を後押し

さて、今回の講演は「明るい未来」をテーマとしていますが、アフターコロナという状況の中で、日本経済にも明るい兆しが見られるようになりました。2月に日経平均株価が史上最高値を34年ぶりに更新するなど、新たな経済成長への期待が高まっています。しかし、人口減少や人手不足など構造的な課題も依然深刻です。今後の社会・経済の成長のためには「地域の活性化」と「企業などの省力化」が不可欠で、デジタル化の推進やデジタルテクノロジーの活用が求められています。

このため全銀協では、「社会課題解決への貢献」「安心安全で利便性の高い金融インフラの構築」「金融システムの健全性・強靭化向上」の3つを活動方針の柱に据え、デジタル技術を活用した取り組みを進めています。その中で、まず地域活性化について、会員行であるみずほ銀行の事例を2つ紹介します。

1つ目はスマートシティー化に取り組む、福島県会津若松市のデジタル地域通貨サービス「会津財布」です。このサービスにはキャッシュレス決済をはじめ様々な決済機能が集約され、域内での消費を喚起する仕組みになっています。また、決済データは効率的な店舗経営などに活用され、加盟店が2023年末で450店舗まで拡大するなど、地域経済や市民生活向上への寄与が期待されています。2つ目は過疎地域に指定されている、東京・八丈島のスマートアイランド化に向けた支援事例です。具体的には防災センサーなどのインフラを整備する「防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」、AIを用いたクジラの回遊予測などの「観光DX」、高齢者の見守りや生活利便性向上に取り組む「行政DX」で実証実験を進めており、島全体の活性化や課題解決に向けた取り組みが継続されています。

決済の省力化やマネロン対策も拡大

次に、デジタル技術を活用した決済の省力化として、煩雑な事務手続きが伴う手形・小切手の電子化も推進しています。試算では、この5年で手形・小切手の電子化が進んだことによる利用者全体のコスト削減効果は年間444億円と推計されています。全銀協では、2026年度を全面電子化の期限に設定し鋭意取り組んでいるところであり、実現すればさらに288億円の削減効果が期待されています。また、QRコードを活用した地方税の電子納付もスタートしています。固定資産税や自動車税などの電子納付が可能で、すでに開始から10カ月で約1400万件のスマホ納付の実績があり、2024年度は全地方税目に、2026年度には各種保険料や水道料金などの公金にも拡大予定です。

デジタル技術は安心安全なインフラ維持への貢献も期待され、AIを活用したマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策の高度化の取り組みも進んでいます。マネロンが疑われる資金のやり取りは、現在、全国で年間70 万件発生しています。全銀協では「マネー・ローンダリング対策共同機構」を立ち上げ、銀行の取引データをAIで分析してマネロンリスクが高い取引を検知するサービスを、2025年4月から提供予定です。

業種横断でデジタル時代の課題に挑む

一方、デジタル技術は金融犯罪を仕掛ける側も活用しているため、フィッシング詐欺なども多様化・巧妙化しており、その対策が課題となっています。銀行界ではこれまでも利用者への注意喚起やフィッシング対策を行ってきましたが、昨年はフィッシング詐欺を含めたインターネットバンキングの不正送金被害額は、約87億円と過去最悪でした。

さらに、投資話を持ち掛けてお金をだまし取る投資詐欺も巧妙化し、SNS上でAIなどを使って加工した画像で企業や著名人の名前をかたり、偽の投資話に勧誘するケースが見られます。サイバー攻撃にも注意が必要で、その対応は銀行にとって極めて重要な課題であるとともに、現在の暗号技術が量子技術の発展で解読される可能性にも備える必要があり、業種横断で取り組む必要があると考えています。銀行界では日々変化する金融犯罪被害の抑止やサイバー攻撃への対策を講じながら、お客様の大切な資産を守るという観点から、フィンテック企業の皆様と連携する機会を今後増やしていきます。

構造的な課題の解決には、今回ご紹介したような中長期的な取り組みを着実に継続すること、そして生成AIのようなゲームチェンジャーになる技術の積極的な活用が重要です。銀行界はこれからも皆様のお力もお借りしながら、「明るい未来」づくりに取り組んでまいります。

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