昨年の弱気相場で大きな痛手を負った苦い記憶から、資金の安全な逃避先とみられた高配当の上場投資信託(ETF)には600億ドル(8兆9300億円)余りが流入した。
それから11カ月が経過したが、市場がハイテク一辺倒に傾く中で、その読みはことごとく外れている。中でも最下位に甘んじているのは、180億ドルのiシェアーズ好配当株式ETF(ティッカー DVY)で、運用成績は総合リターンベースでマイナス5.4%。公益や金融株に特化したことが裏目に出た。一方、ハイテク中心のETFは15%余りのプラスをたたき出している。
これは将来の値動きを予測して売買戦略を立てることの危険性を改めて浮き彫りにする。米金融当局が40年ぶりの積極的な利上げを展開する中で、慎重姿勢を強めた投資家は、かねて着実に株主還元を行ってきた安定企業へと吸い寄せられた。だが結果的に、とりわけ国債利回りの上昇にぜい弱なアンダーパフォーマー銘柄を抱え込むことになってしまった。
こうした中、200億ドル規模のSPDR S&P配当ETF (ティッカー SDY)は運用成績が総合リターンベースでマイナス3%、シュワブ米国配当ETF ( SCHD)はマイナス2.4%、バンガードの高配当利回りETF( VYM)はほぼ横ばいと打撃を受けた。一方、インベスコ・ディビデンド・アチーバーズETF( PFM)はプラス6.6%とプラスを確保。プロシェアーズS&P500配当貴族ETF( NOBL)はプラス2.3%、バンガード米国増配株式ETF( VIG)はプラス9.6%となった。
インベスコのニック・カリバス氏は、PFMが精彩を欠いているのは、いわゆるハイテク7社で構成する「マグニフィセント・セブン」をアンダーウエートし、オラクル、シスコ・システムズ、IBMのようなそれほど成長性が高くないテク銘柄をオーバーウエートにしていることが要因と述べた。プロシェアーズは、NOBLの組み入れ銘柄は、S&P500種株価指数の構成銘柄全体の収益が今年縮小する中でも、平均して利益を伸ばし、「ファンダメンタルパフォーマンス」を実現したとしている。ステート・ストリートのマット・バルトリーニ氏は、配当株重視の戦略には「バリューバイアス」があり、2023年は「グロース市場」だと指摘した。
バンガードとブラックロックはコメントを控えた。
シュワブ・アセット・マネジメントのシニア投資ポートフォリオストラテジスト、DJティアニー氏は、「ごく一握りのグロース株が市場のパフォーマンスを支配する中、今年は高配当型のバリュー株にとって厳しい環境となった。金利上昇で債券が妙味を増す中ではなおさらだ」と述べた。同社はSCHDを手がける。
カリフォルニア州トーランスを拠点とするEPウェルス・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、アダム・フィリップス氏は、ここ1年にファンドの組成元から配当株戦略を売り込むメールや電話を何度も受けた。
「その餌には食いつかなかった」と言うフィリップス氏。グロース株は「どこにもいかない」とし、金利がピーク水準に達したらなおさらだと語った。
同セクターを避けているのはフィリップス氏だけではない。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)によると、高配当ETFに今年流入した資金は7億8600万ドルにとどまり、2006年以来の少なさとなった。
原題: Billions Wiped Out as Stock-Safety Trade on Wall Street Misfires(抜粋)
(第7段落目のコメントを追加して更新します)
からの記事と詳細 ( 安全なはずの配当株ETFが裏目に、ハイテク株復活で明暗分かれる - ブルームバーグ )
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