自転車乗車時のヘルメット着用を「努力義務」とする改正道路交通法が4月に施行される。
対象が現在の13歳未満から全年齢に拡大する。本人の意思に委ねられるものの、着用の習慣が広がることを期待したい。
自転車死亡事故では頭部が致命傷となるケースがもっとも多い。一方で警察庁の分析によると、ヘルメット着用時の致死率は未着用時の半分以下という。死亡したり、重傷を負ったりする可能性を減らすことは間違いない。
ただ、こうした効果は周知されていないのではないか。民間団体の調査(2020年)では着用率の全国平均は11%にとどまる。
「法律で決まったから」ではなく、命を守る手段として自発的にかぶることがのぞましい。行政や警察も、制度の趣旨などについて啓発を強化する必要がある。
ヘルメットをかぶったからといって、事故そのものを防げるわけではない。大切なことは、一人ひとりが自転車のリスクを認識し、交通ルールを守ることにほかならない。その点では自転車利用の現状には課題が多い。
自転車は道交法上、軽車両に位置づけられる。車と同じように車道の左側を走るのが原則だ。「止まれ」の標識がある交差点では一時停止しなければならない。飲酒運転も禁止だ。だがこうしたルールが守られているとは言い難い。
警察庁によると、21年に起きた自転車乗車中の死亡事故のうち、7割超で自転車側に法令違反があった。信号無視や一時不停止のほか、スマートフォンを操作しながら運転するといった安全運転義務違反である。歩行者と接触する事故も毎年2000件以上起きている。
免許制度がない自転車は交通法規を学ぶ機会が限られる。警察は違反自転車の取り締まりを強化しているが、それだけでは限界がある。利用者自身の安全への意識をより高めることが重要だ。ヘルメット着用の努力義務化をその契機としたい。
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