白い「A112アバルト」のオーナー
それを発見したのは、ヨーロッパを代表するヒストリックカー見本市「レトロモビル」の会場である。
第47回を迎えた今回は、2023年2月1日から5日まで開催された。会期中にはオークションハウス「アールキュリエル」のセールも行われ、トゥリング・スーペルレッジェーラ製バルケッタボディーを持つ「フェラーリ340アメリカ」(1951年)が570万6000ユーロ(約8億0404万円。税・手数料込み)で落札された。
いっぽうで、会場内には近年恒例である「2万5000ユーロ(約352万円)以下の中古車コーナー」も設けられていた。ここに紹介するのは出品車の一台で、一見何の変哲もない1981年1月登録の白い「アウトビアンキA112アバルト」である。プライスタグの横に記されたもう1枚の紙には、こう記されていた――「装甲仕様。元マフィア」。
装甲仕様であることが真っ先に分かるのは、分厚い窓ガラスだ。テールゲートの内側にも補強のパネルが付加されている。それらは人々の関心を大いに引いていた。勝手にドアを開ける来場者さえいる。
売り主は、パリ・セーヌ左岸の中古車コレクション「フュトゥール・クラシック」である。当日は担当者の姿が見当たらなかったため、後日筆者はプライスタグに記された電話番号に連絡してみた。すると相手は次のように語ってくれた。
「初代オーナーは、カモッラ(ナポリ系マフィア)の幹部でした。彼は新車でこのクルマを手に入れました。私は2番目の所有者です」
続いて彼は装甲のグレードについても解説してくれた。
「装甲にはB0からB10の段階があります。最高のB10は米国大統領車レベルです。このA112アバルトはB6相当で、ルーフやテールゲートを含めて改造が施されています。カラシニコフ銃の攻撃にも耐えられます。もちろんタイヤも強化されています」
テールゲートを含めた鍵も、特殊なものが用いられているという。その他の特徴的な装備としては、スピーカーとマイクがある。
「それらを通じて車内外で会話をしていたのです」
ファクトリー仕様では用意がなかったエアコンが装着されているのも、なるべく窓を開けたくなかったためであることがうかがえる。
後部に搭載された消火器は、万一の火災が発生した際、4輪に噴射される。
「重量は300kgも増加していますが、エンジンは70馬力のままです」
走りよりも保身を優先したことが分かる。
「走行距離はわずか1万1000km。昨年、ブレーキ系統を現行型『フィアット・パンダ』のものを移植して強化しました」と彼は結んだ。
価格は、前述したコーナーの価格上限に限りなく近い2万4900ユーロだ。
からの記事と詳細 ( 第795回:イタリアマフィアに学ぶ「安心・安全なクルマ選び」 【マッキナ あらモーダ!】 - webCG )
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