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Saturday, November 19, 2022

[論説]果樹の低樹高栽培 安全な作業の切り札に - 日本農業新聞

 はしごや脚立の使用を極力抑えた果樹の低樹高栽培の導入が各地で進んでいる。高齢化が進む産地では、安全で無理のない作業が重要だ。所得確保には収量を維持することが肝心。低樹高栽培は、現場の需要を満たす事例や成果が上がっている。地域ぐるみで導入したい。

 愛媛県西予市の農家は、栗を3~3・5メートルと樹高を低くし、盆栽型の樹形に仕立てている。導入したのは、県くり品評会の大臣賞を受賞した70代の農家で、低樹高にしたことで風通しと日当たりが良くなったという。

 留意している点は、品種特性を理解した剪定(せんてい)を行うこと。大玉を生産するために、結果母枝は1平方メートル当たり5、6本残す。10アール当たり40本植えていた木は、20本に間引き、作業をしやすくした。

 同県がまとめた伊予カンの超省力化技術でも、樹形を改造して低くすることを推奨する。樹高を切り下げ、通路側を伐採することで、通路を確保し日当たりや風通しを改善。脚立を使わなくても作業できるため、転落事故の危険が減る。加えてきれいな果実を収穫でき、品質向上につながるという。

 ビワ産地を抱える千葉県でも、ポット栽培をすることで低樹高化が可能になった。高齢化や後継者不足が進み、労働力不足が問題となっている中、従来の栽培方法では、はしごを使って木に登り、作業する必要があり、作業時の落下など事故の危険性が懸念されていた。同県農林総合研究センターは、低樹高にすることで脚立やはしごからの転倒・転落事故が減り、安全な作業につながるとみる。

 農水省は、面積が減少しても生産量を維持できるよう、収量増が期待できる省力樹形栽培の導入を呼びかけている。樹高の低い木を直線的に密植するのが特徴で、大きな木を1本単位で管理する慣行栽培より、省力化や収量増加が期待でき、農作業事故の防止にもつながるという。

 国内では、果樹の栽培面積の減少が目立つ。同省によると2022年のミカンの栽培面積は前年比2%、その他のかんきつ類は同1%、柿は同2%、リンゴは同1%と、多くの品目で減っている。同省は「農家の減少、高齢化で廃園が進んでいる」(生産流通消費統計課)と分析する。安全に作業できる環境整備こそ、生産減に歯止めをかけるきっかけになるはずだ。

 ただ、樹形を変えるには、ポット栽培などの根域制限や剪定などの新たな技術の導入が必要となり、現場への普及はこれからだ。行政やJAなどは栽培講習会などを通して安全作業につながる低樹高栽培を紹介し、興味を持ってもらうことから始めたい。

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