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「今までぼやっとしか見えなかった黒字という文字。これが本当にクリアに見えるようになってきた」。自信を口にしたのは、日本電産の常務執行役員で車載事業を担当する早舩一弥氏だ。同社が2022年10月24日に開いた決算会見で発言した。
黒字化の見通しが立ったと発表したのは、同社の電動アクスル(eアクスル)事業である。モーターやインバーター、減速機などを一体化した、電気自動車(EV)の中核モジュールだ。日本電産は2019年4月に電動アクスルの第1世代品の量産を開始したが、開発投資や設備投資がかさんで赤字が続いていた。
同社会長兼最高経営責任者(CEO)の永守重信氏は電動アクスルの第1世代品について、「もうけることは最初から頭になかった」と説明する。利益よりも、「シェアを取りまくる」(同氏)ことを優先して戦略的な価格を設定した。
受注状況は好調とする。電動アクスルの生産台数は、2021年度は年間23万台だったが、2022年度は55万台を予定する。2023年度には120万台まで増やす計画だ。
シェア獲得を重視してきた電動アクスル事業だが、2023年度(2023年4月~2024年3月)には単年度での黒字化を実現できそうだという。2025年度には累積損失を解消できるとの見通しを示した。
コストを35%低減
黒字転換のけん引役となるのが、同社が2022年9月に量産を開始した電動アクスルの第2世代品である。最高出力100kW品の生産を、中国の広州尼得科汽車駆動系統で始めた。これに続く形で、最高出力150kW品も2023年5月から量産する計画である。
第2世代品は、「収益性が悪かった第1世代品からコストを35%低減できる」(早舩氏)という。現在は生産を開始直後のためコスト水準は目標には至っていないが、「全社をあげて量産立ち上げを進めている」(同氏)という。
100kW品の外径寸法は432.8×408.3×351.3mmで、質量は57kg。第1世代品よりも19%軽くしつつ、トルクや出力密度を20%向上させた。永久磁石式同期モーターの磁気回路やインバーターの見直しが効いたという。
モーターの磁石に使うジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)といった重希土類の使用量も減らした。磁石は一定以上の温度になると磁力が失われるが、DyやTbなどを添加すると耐熱性を高められる。今回、油冷による冷却システムを改善することで、こうした元素を減らしても磁力を維持できるようにした。
静音性も向上させた。部品配置の最適化や新設計のギアを採用することなどにより、モーターから発生するノイズ(雑音)を従来品から6~8dB低減した。
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