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Thursday, September 29, 2022

クリアな音再現、有機トランジスタアンプを開発 さいたまの技術ベンチャー - 産経ニュース

完成した世界無二の有機トランジスタアンプ(柴田さん提供)

さいたま市の技術ベンチャーが有機トランジスタを使ったオーディオ用アンプを開発した。一般的なオーディオ用アンプには真空管や半導体が使われているが、有機トランジスタで代替するのは「世界で唯一無二」。有機トランジスタアンプは生演奏に近いクリアな音を再現できるといい、実用化を目指す。

有機トランジスタアンプを開発したのは、さいたま市北区の「キラコール」。社長の柴田俊博さん(76)はバイオリンをたしなむなど音楽にも精通しており、趣味と実益を兼ねて有機トランジスタアンプを完成させた。

一般的なオーディオ用アンプに使用されている半導体はシリコンなどの無機物を使っているが、柴田さんは炭素と水素からできた有機物を用いた半導体を使用してトランジスタを製作。トランジスタはあらゆる電子回路で電気の流れをコントロールする部品で、有機トランジスタを使うことで「生演奏に近く、色気があるような、楽器本来の音にかなり近い音が出る。特に弦楽器で顕著だ」と話す。

開発した有機トランジスタを手に持つキラコールの柴田俊博社長=狭山市(兼松康撮影)

柴田さんは東京都内の化学企業で液晶の研究を30年以上続け、2007年に米コロラド州で液晶研究開発会社を設立。その後、日本の高機能化学製品製造企業の招きで技術顧問に就任するのと並行して平成21年にキラコールを設立した。令和元年には狭山市の「さやまインキュベーションセンター」に研究室を開設し、液晶や有機トランジスタアンプの研究を続けてきた。

長年のオーディオ愛好家でもあり、「子供の頃から真空管アンプを作っていた」という。高校や大学時代には東京・秋葉原の電気街に通い、「マーク・レビンソン、マッキントッシュといった一流のアンプの音を聴いてきた」と振り返る。バイオリンは20歳頃に始め、現在も続けている。

こうした中、「有機半導体をデジタルではなく、アナログのアンプに使ってみたらどうなるのか」と興味を持ち、2年から有機トランジスタアンプの開発に着手。この年の11月に完成した最初の試作品では大きなノイズ(雑音)がしたが、「これまで一度も聞いたことのないような音がする」と研究を続け、試作を重ねて昨年6月にアンプを完成させた。

有機トランジスタアンプは「元の音に含まれる整数倍の周波数である『倍音』が非常によく聞こえる」と柴田さんは指摘する。これにより「色気があるというか、生々しい音というか。倍音が出ていることを数値で表したい」と話す。

来月2日には埼玉県狭山市で無料試聴会も開催。この試聴会は既に参加者の募集を締め切ったが、長野県茅野市の自身の別荘でも無料視聴会の開催を検討している。今後は実用化を目指し、オーディオメーカーとの協業や、オーディオ愛好家個人からの直接受注で30万~50万円を目安としたアンプの生産も視野に入れる。

柴田さんは「退職後の自分の挑戦が同世代の光となれば」と語り、世界初の有機トランジスタアンプに期待を込めた。(兼松康)

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