静岡県熱海市の土石流災害を踏まえ、危険な盛り土を全国一律の基準で規制する盛り土規制法が成立した。来年5月ごろ施行される。
盛り土は宅地、農地、森林など造成場所ごとに異なる法令が適用されていた。独自の条例で規制する自治体も多いが、対策が緩い場所で危険な造成が行われるケースが多い。
規制強化によって、自治体は監督権限が拡大する一方、住民の安全を守る責任も一段と重くなる。法律の実効性確保へ、執行体制を着実に整備しなければならない。
熱海市の土石流は昨年7月に発生。盛り土など大量の土砂が家屋を押し流し、災害関連死を含む27人が死亡、1人が行方不明となっている。当時の県条例の罰則が軽く、不適切な盛り土造成への抑止力に欠けたと指摘されている。
今回、宅地造成等規制法を抜本改正して改称し、あらゆる用途の土地に適用する。都道府県や政令市、中核市が、盛り土の崩壊で住宅に被害を及ぼす恐れがある場所を規制区域に指定。区域内の造成を許可制とし、命令に違反した法人には最高3億円の罰金を科す。土地所有者らが安全な状態を維持する責務も明記した。
危険な盛り土による被害を防ぐには、自治体が規制を適切に運用することが肝要だ。
ただ、体制整備には課題が多い。盛り土に関しては、包括的な対策を行う部署がない自治体が大半だ。土木系の専門職員も慢性的に不足している。そうした中で、区域指定や安全検査など業務の負担は増す。
自治体で区域指定や造成許可の基準が異なると、対策の抜け穴が生じることも危惧される。国は具体的な指針を策定するという。それは当然として、自治体を財政面でも支援し、円滑な運用を後押しすべきだ。
盛り土対策の部署新設といった自治体ごとの取り組みに加えて、県と市などの連携強化も欠かせない。
熱海市の土石流災害を巡り、静岡県の第三者委員会は今月中旬、最終報告書を公表。過去の県と市の対応を「失敗」と批判した。不備のある盛り土の届け出を受理するなど初動に問題があり、県市とも盛り土が崩落する危険性を想定せず、足並みがそろわないまま不適切な開発行為を許したとしている。
行政の連携不足が被害を拡大させたとの指摘を重く受け止めたい。教訓を生かし、県と市などの役割をより明確化することも検討すべきだろう。
熱海市の被害を受けた全国の盛り土総点検で、愛媛県内に問題はなかったが、全国千カ所以上で不備が見られ、うち約半数では必要な災害防止措置が確認されなかった。
6月は土砂災害防止月間。近年は梅雨時期に豪雨が頻発しており、自治体は危機意識を持って被害防止に当たらなければならない。
からの記事と詳細 ( 盛り土規制法成立 住民の安全守る体制整備着実に - 愛媛新聞 )
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