
2019年、大津市で散歩中の保育園児が犠牲になった事故は、保育園や幼稚園周辺の道路の安全対策が手つかずになっている現実を浮き彫りにした。
保育施設は保護者らが送迎するのが前提で、周辺道路の安全対策はそれほど重視されてこなかった。一方で都市部では園庭が狭い園も多く、散歩などの園外活動に出ることも珍しくない。
事故直後、保育施設周辺で行われた緊急点検では、全国で延べ約3万6000か所の危険箇所が見つかり、関係機関に新たな課題を突きつけた。大津市の事故現場には速やかに防護柵やクッションドラムが設置された。市は19~20年度、計7億6000万円を投じ、保育施設周辺を中心に、市道での緊急安全対策を施した。
■「二度と起こさせない」
事故の翌年、大津署交通1課に異動した青木洋明巡査部長(34)は、この2年の間に管内約70か所の保育施設を訪ねた。園の依頼で同署が作成し、事故の発生場所がわかる「おさんぽ安全マップ」を携え、散歩のしかたを伝授する独自の取り組み「おさんぽ指導」を一手に担う。「悲惨な事故を二度と起こさせない」。任務に並々ならぬ思いを込める。
警察官として「交通畑」を歩むことは、青木さんにとってはごく自然な選択だったという。
写真でしか知らない祖父は60年ほど前、バイクを運転中に車と衝突し、命を落とした。相手の車は逃走。防犯カメラもない時代で、ひき逃げの容疑者は見つからないまま時効となった。
事故当時、母は幼稚園児。祖母と高校生だった伯父が必死に家計を支えた。肉親を奪われた喪失感と怒り……。交通事故遺族として育った母の告白は子ども心に強烈に響いた。「事故で大切な人を失って悲しむ人を減らしたい」。いつしかそんな思いが芽生え、導かれるように警察官になった。
■危険箇所 地図に
19年の事故当時は草津署で事故捜査を担当していた。自身にも子どもがいる。被害者の親たちの心痛はいかばかりかと思いを巡らせた。
20年、大津署と大津北署は「地理情報システム(GIS)」を使い、各園周辺で起きた過去3~5年分の交通事故を地図上に明示した「おさんぽ安全マップ」を作り、管内の保育施設に配る施策に着手した。
青木さんが大津署に赴任したのはこの頃。取り組みの担当を任された際、「ただマップを作って配るだけでは不十分では」と進言し、警察官が園に出向いて安全な散歩法を直接助言するよう提案した。これが全国でも珍しい「おさんぽ指導」の実施につながった。
■保育士に助言
初回の指導では保育士らにマップで事故多発地点を確認してもらい、2回目は一緒に散歩コースを歩く。ドライバーへの注意喚起として、横断手旗とピンクのベストを配布し、散歩で活用するよう促す。
指導で特に強調しているのは「横断方法」と「交差点での待ち方」だ。道路を渡るときは手旗で車を完全に止め、安全なルートを確保することが大切。交差点では、防護柵や電柱などの障害物の後ろに立ち、身を守るのが望ましい。
「どう歩くと安全でしょうか」「この場所の交通ルールが分かりません」――。様々な質問には「駐車場の車の出入りが多いので気をつけて」「ここは右側通行で」などと具体的に答える。安全確保のため慣れ親しんだコースの変更を求めることもある。
週1、2回散歩に出ているにおの浜保育園(大津市)の主任保育士、小林郁夏さん(55)は「おさんぽ指導で危険箇所や注意点がよくわかった。私たちの意識が高まったことで、園児にも自然と注意力が身についていると感じる」と語る。
管内の保育施設は132か所。「まだ行けていない園がある。大津署在任中に全ての園を回りきれたら」と青木さん。小さな命を守る任務は今後も続く。
(この連載は藤岡一樹、林華代が担当しました)
◆安全なお散歩のポイント
・最低3人の保育士らが引率し役割分担
・園児が列を離れないよう声かけと速度調節
・駐車場付近では園児を車両の死角に行かせない
・交差点で青信号でも列が整わなければ渡らない
・横断歩道や駐車場では積極的に運転者にアピール
からの記事と詳細 ( <下>安全な散歩 共に模索 - 読売新聞オンライン )
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