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Thursday, November 25, 2021

[著者来店]「あなたに安全な人」木村紅美さん…寄る辺ない人への共感 - 読売新聞

 意外なことが起きた。引きこもりで潔癖症の知人の目が、コロナ禍でにわかに輝きだしたのだ。「後ろ指を指されているように感じていた生き方を全肯定されたからですよね。肯定されないと人間は生きていけない」。人への共感が創作の根っこにある。

 デビューから15年。3年ぶりに出す単行本だ。デモ参加者を突き倒し、死に至らしめたかもしれない元警備員の男と、生徒を自殺に追いやったかもしれない元教師の女。新型肺炎の「感染者第一号」となることを誰もが恐れる地方の街で、おびえながら生きる2人が奇妙な同居生活を始める。ほぼ顔を合わせず、やりとりは手紙中心なのである。

 「デモの警備員は炎天下で自分の感情を押し殺し、人間性を奪われている」。沖縄で参加したデモで抱いた感情やコロナ禍の暮らしから物語を膨らませた。寄る辺ない人びとに居場所を与える作風は、3年前の芥川賞候補作『雪子さんの足音』とも共通する。「密室に男と女がいて何も起きない展開」もこの人らしい。

 「死んでもおかしくない」ほどのいじめを受けた小6の時、救いとなった本がある。いじめに屈しない少女を描く山田詠美さんの『風葬の教室』だ。「小説って自殺したい人を救う力があるんだ」。幼少期からお話を書くことが好きだったが、文学作品とのかけがえのない出会いになった。

 大学を出て「コネで入った」商社を5年で辞め、アルバイトや派遣社員に。「正社員との差を実感した」。昨秋アパートが立ち退きになるのを機に、東京から盛岡市の実家に移った。7人暮らしで、1歳のおいの子守や家事に追われる日々だ。「大人が何人もいても子育ては大変。何かの拍子に虐待に走る人のことが分かるなと。今後はそういう経験を生かした小説を書けるかもしれません」(河出書房新社、1837円)武田裕芸

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