
本間ほのみ
白杖(はくじょう)を左右に小さく振り、障害物がないかを確認しながら、山城完治さん(65)が歩いていく。東京都豊島区駒込の商店街。広い通りで、コツッと白杖に何かが当たった。路上駐車していた自転車だ。少しバランスを崩したが、慎重によけてまた歩を進めた。
路上駐車のバイクや自転車にぶつかることはしょっちゅう。車の進入を防ぐポールにもよくぶつかる。場所によって形も設置間隔もバラバラで避けて通るのが難しい。不自由の多い生活は最近、さらに不自由さが増したと感じる。
よく行くスーパーではセルフレジが増え、これまでレジ台に置けばできた会計が、1人でできなくなった。新しい機器の操作には練習が必要になるが、スーパーで練習するわけにいかない。店員に毎回頼むのも気が引ける。
以前なら駅や街で困っていると「つかまってください」と、肩につかまって誘導してもらうことがあった。でも、コロナ禍で「ソーシャルディスタンス」が推奨される今、そんな声を聞くこともずいぶんと少なくなった。
山城さんは生まれつき、強度の弱視で「目の前に何かある、くらいしかわからない」という。全日本視覚障害者協議会の代表理事を務め、鉄道会社に転落防止のホームドアの設置を求めるなど、30年以上「誰にとっても安全な町づくり」を訴えてきた。山城さんらの声を受け、ホームドアの整備は進んできている。でも、東京に暮らして50年近く経つ今も、山城さんの行動範囲は限られている。
道を尋ねたとき「あの店を曲がって」と言われても「あの店」が分からないから、一歩を踏み出せない。そんな積み重ねで、知らない場所に行くことは、ためらってしまう。
東京では57年ぶりとなる2回目のパラリンピックが開催中だ。「共生社会」「多様性」という言葉を聞く機会は確かに増えた。でも、山城さんの日常で、その言葉を実感する機会は、少ない。(本間ほのみ)
からの記事と詳細 ( 安全な町づくり、障害者の参加は? 視覚障害の山城さん - 朝日新聞デジタル )
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